DTMスキルアップメモ - frenchbread

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「作詞少女」を読んで作詞に対する意識の甘さを知る

Twitterのタイムラインだったか何かで「作詞少女」という本の存在を知り、それも何人かが紹介しているのを目にしたのですが、どれも好評価の様子。

 

アマチュア音楽活動を始めてそれなりに時間が経ちましたが、「作詞」の技術についてはあまり考えたことがなく、「うまい人もいればそうでもない人もいるな」とか、「語彙力や言語センスの違いなんだろうな」とか、その程度の感覚しかもっていませんでした。

強いて言えば、僕は詩先(詩を先に作って、その詩にメロディをあてこむ作り方)で曲作りをすることが多いのですが、直感的に「これはイイ!」と思った詩に対しては気に入ったメロディが作れる傾向があって、そういう意味で詩の影響って作品全体のクオリティに直結するなあと思っていたくらいです。

 

それくらいの意識で、評判も良さそうだしと思ってこの本を買ったのですが、自分の中の漠然としたイメージや疑問が意外なくらいスッキリ解消しました。

ということでご紹介。

 

作詞少女~詞をなめてた私が知った8つの技術と勇気の話~

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どんな本?

タイトルが多くを物語っていますが、文字通り作詞の技術(音符に対する字数の考え方、母音で決まる歌い心地の重要さ、等)に加えて「勇気の話」が重要なテーマになっています。

主人公の女子高生と、実は有名なプロ作詞家だけど同じ高校に通っているもう一人の女子高生の交わりを軸にしたラノベ風な物語に沿って、これらのトピックが説明されていきます。

 

いま、「勇気の話」が重要なんてなんだか稚拙、もしくは体育会系的だと思いませんでした?

それから、女子高生2人が主人公ってのもいかにもオタク系ボーイズの受けを狙った安直な設定じゃね?とか。

 

しかしながら、実はこの辺が絶妙でして、女子高生という未熟で多感なイキモノのストーリーとして語られることによって、「真に大事なのはテクニックよりメンタルや姿勢(=勇気)」というメッセージがストレートに伝わってくる仕掛けになっているんです。

そういうわけで、この記事ではこの重要なテーマについては直接触れません。要約して説明したところで興ざめするだけだからです。

あと「8つの技術」の内容についても紹介は控えておきます。こちらは単にネタバレを避けるためです。

その代わり、以下ではこの書籍の考え方やメッセージ性を象徴していると僕が感じたくだりを、3点ピックアップして紹介しようと思います。

 

完成させるのが難しい作曲、完成させるくらいは容易い作詞

音楽をやっている人はかなりの割合で「作詞は難しい」と言い、音楽をやっていない人はかなりの割合で「作詞くらいはできそう」と言う。これの正体は何か、作詞とはどういう技術なのか、曖昧に語られがちな部分はなぜ曖昧にしか語られてこなかったのか。

 

これは本文ではなくあとがきの一節ですが、実際に作詞したことがある人にはピンとくると思います。

やろうと思えば、なんとなく映えそうなあたりさわりのないキーワード、たとえば「光」とか「空」とか「想い」とか「明日」とか、そういうものをメロディの音符の数にはめ込めんでいけば、それっぽい詩ができないことはないですよね。

当然それはまっとうな作詞とは言えなくて、五線譜にでたらめに音符を配置してCとかFとか書いてもまず曲にはならないのと同じことのはずです。

ですが、詩の場合はそこそこデタラメな出来栄えでも、直接的に音楽をダメにするわけではないので、「印象に残らない」程度で済んでしまうのでしょう。

 

この本のサブ主人公であるプロ作詞家の女子高生(破天荒な天才タイプ)は、プロの世界にすらその延長線上にいる「テキトー作詞家」がたくさんいると言います。

一瞬「さすがにそんなことはないんじゃない?良い作品作れなきゃプロになれないだろうし」と思いましたが、よく考えるとプロって必ずしも「その分野のスキルが優れた人」ではないんですよね。

たとえば自分は会社員ですが、出世するのは「優れた技術を持っている人」とは限らなくて、心身が強靭で、チームの業績を自分の手柄に見せることに長けていて、多少の運に恵まれていれば、無能な人でも出世します。会社にもよるでしょうけど。

サラリーマンとクリエイターではちょっと違うかもしれませんが、運や要領の良さでのしあがったりポジションをキープしているプロ作詞家も実際いるのかもしれないな、と思ったりしました。

 

売れる歌詞は「良い歌詞」ではなく「都合の良い歌詞」

「たとえばこういった語彙だ。『大丈夫』だの『君の頑張りを見てる』だの『明日から頑張ろう』だの。なるほどこれは常套句だよな。大丈夫じゃねえし、君の頑張りなんか知ったこっちゃねえし、そもそも頑張ったかどうかなんて関係ねーし、”明日から”ってお前、今まで一体何回それ言い続けて何もせずに生きてきたんだって話だ 」

(中略)

「アイドルの歌にこの類の手法が使われがちなのは、アイドルを求める大衆ってのはそもそも癒されたり元気になったりすることが目的だから、欲しいところに欲しい言葉が飛んでくりゃそりゃ感動もする。頭の中で歌詞の意味を都合の良いように解釈もする」

 

プロ作詞家の女子高生先生のお言葉より。(こういう言葉遣いのキャラなんです。)

たしかに、音楽に限らず「売れるもの=良いもの」ではないということは日常いろいろな商品やサービスに対して感じます。

「売れることを優先して、良いものを作る最大限の努力をしないのはクリエイターとしていかがなものか」とも思いますが、ビジネスとは売れるものを提供することが大前提ですから、結果として「良いもの」でないものが世にはびこるのは宿命とも言えるでしょう。

作る側の人間としては、この身も蓋もない事実を受け入れないといけないですし、「売れているもの=良いもの」だと盲信しない感性を磨くべきですよね。

 

なお書籍ではこの問題提起に対する答え(「都合の良いものではない、良いもの」を作って、かつそれが大衆に受け入れられるには?)もちゃんと用意されています。

 

作詞家とは「音楽語の日本語吹き替え」

「作曲は『言いたいことや伝えたい情景を作る』”主体性そのもの”だ。編曲は『作曲の言いたいことをさらに盛り立てる』演出家。演奏家や歌手は、そうやって作り上げられた言いたいことや情景を『聴衆に語り伝える』語り部だ。さて、じゃあ作詞っていうのは、なんだ?」

 

同じく、プロ作詞家の女子高生先生のお言葉より。

はっきり言語化して考えたことはなかったですが、まずここまでは意外性なく「そうだな」と思いましたし、みなさんも同じなのではと思います。

 

では作詞とは?ですが、『音楽後の日本語吹き替え』、もう少し丁寧にいえば『メロディの語る物語性を音楽家以外の人にもハッキリと理解させる』技術だと彼女は言います。

なるほどねえ!

これを踏まえると、作詞をするためには音楽語を理解することが必須ということになります。「英語を日本語に翻訳する人なのに英語はわからない」なんてありえないですからね。

 

「作詞のアプローチはふたつある。ひとつがアタシみたいな作曲系の『作家型』。もうひとつがボーカルや楽器演奏者といった『アスリート型』だ。このふたつは結構ちがうが、どうしようもなく作曲が苦手ってんならアスリート型で”歌心”を徹底的に体に叩き込むってのもひとつの手段だろう」

 

したがって、良い作詞をするためには作曲か表現技術(歌や演奏)を学ぶべき。 これが彼女の(この本の)主張の1つです。

そう言われてみると、これまで僕が曲付けをさせていただいた詩の中でも、自身でも作曲される方や歌を歌う方の詩のほうがメロディを乗せやすいことが多いと感じます。

おそらく詩先とはいえ、詩を書く時点で音楽の姿や完成した曲の歌うときの気持ち良さが漠然とでもイメージできているからなのでしょう。

 

まとめ

一見「ある程度の字数制限のもとで言葉を埋める」という、日本語が不自由なく操れれば誰でもできるように思える作詞ですが、突き詰めて考えれば、実はどういう行為で、ゆえにどんなテクニックや姿勢が求められるか、が紐解けるわけですね。

その「突き詰める」ことを僕のように主体的にしない人が多い「作詞」という分野ゆえに、そこにスポットを当てて、なおかつわかりやすく読みやすいラノベ形式でまとめた本書(それこそ、わかりにくい概念を伝えやすく置き換える名翻訳)は貴重だと思いました。

 

同じ著者の「作曲少女」も面白そうですね。

読んだらまたレビュー記事あげてみます。