DTMスキルアップメモ - frenchbread

見習いボカロPがそこそこのボカロPになるまで、が描かれていくはずのブログ。

永野光浩「音を大きくする本」を実践すると音はどれだけ大きくなるのか

 先日永野光浩さんの「良い音の作り方」という本を読んで、わかりやすい本を書く方だと思ったので、他の本も!と思って「音を大きくする本」を買いました。

今回は、自分なりのサマリー+自分の曲を材料にした実践、という形の記事にします。

 

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「良い音の作り方」のレビュー記事はこちらです。

frenchbread.hatenablog.com

 

音を大きくする手法まとめ

通読して思ったのが「プロと言っても斬新な手法を使っているわけではなく、一般DTMerがやっていることと基本は同じなんだな」ということでした。

逆に言うと、その基本をどれだけ突き詰めてやれるか?音圧と音質のバランス等を耳で正しく判断できるか?が達人と凡人の分かれ目になるのだな、と。

 

まず、その説明されていた主な手法をざっと紹介しますね。

 

①ピークをつぶして波形を平坦にする

ピークをつぶすことで、0dbに対するマージンをできるだけ多く確保して、その分音量を引き上げます。コンプレッサーの基本用途そのものですね。

コンプレッサーの用法はいくつかありますが、音圧を上げる観点に特化してパラメータ設定を考えると以下のようになります。

  • レシオはできるだけ大きく。本書紹介例だと、極端な場合は30:1など(≒リミッター)。ある程度ダイナミクスを残すなら4:1など。
  • アタックは基本は最小。アタックが長いとピークが残るため。
  • リリースも小さいほうがいいが(音圧を圧縮する状態が素早く解消されるため)、最小値にすると不自然になりやすいので音の特性次第。キックなどタイトなパートならゼロに近くていいし、持続音があるトラックなら100-500msあたりで探る。
 
②超低域の音量を抑える

50Hz以下の帯域は楽器音そのものではなく、空気感として役立つこともあるが、あまり大きくても音量感を伴って聴こえません

さらに、20Hz以下(と20000Hz以上)はそもそも可聴域ではありません。

一方、コンプレッサーやリミッターはその帯域にも反応してしまうので、こういった帯域の音量が大きすぎる場合は、先にカットすることで音量感が増すこともあります。

 

③アレンジを見直す

アレンジがマージン確保を邪魔する(必要以上のピークを作ってしまっている)可能性にあることに注意、とのこと。

たとえばキメの部分で全パートのベロシティを高く設定したりしがちですが、「実はこの部分でこの音は重要でない」というトラックは下げたり、場合によってはカットすることも大事だそうです。

なるほどねえ。

 

ある程度以上の経験者の方なら、上に書いたことの全てもしくはほとんどに「ああそうだよね、知ってる」と思われたのではないでしょうか。

(・・と書くとなんだか内容の薄い本のようで誤解を招きそうですが、サンプル素材を使ったパート別の細かい解説や参考設定値も載っていて、説得力があります。書籍や記事って、コンテンツそのものと同じくらい「説得力」が重要ですものね。)

 

0dbを基準にすることでパラメータを計算可能にする

音圧を上げる手法そのものではないのですが、本書で説明されていた基本の考え方の1つに「各エフェクタを通過する際に、どの箇所でもピークが0db近辺になるようにゲイン調整しておく」というものがありました。

こうしておくと、コンプレッサーのパラメータ設定において「スレッショルドを-20db、レシオを4:1にすれば、ピーク部分が5db圧縮されるので、ゲインを5dbにすればピーク0dbのまま音圧を増やせる」という計算が容易にできます。

コンプレッサーの特性にもよるので計算は厳密ではないですが、大まかにはそうなるはず。調整しきれない部分は、最後に各トラックでリミッターをかけておけばいい、ということです。

メーターのリダクション量とにらめっこしながらちまちまと調整する以外にも、こういう理論的な調整方法もあるんだな、と思いました。

 

実践してみました

この本で紹介されている手法自体は、僕自身もだいたいは知っていたり原理的には理解していることだったのですが、あまり徹底してはおらず、音圧上げに関しては優秀すぎるリミッター「Invisible Limiter」に頼りきっていました。

 

frenchbread.hatenablog.com

 

ということで、自分のオリジナル曲「オレンジロード」の音圧を、改めて本書の手法で上げてみました(③のアレンジ見直しはやっていません)。

 

www.nicovideo.jp

 

サビの一部で比較します。

・・あ、いい曲だと思ったらニコニコ動画でフル版聴いてくださいね?(宣伝)

 

(オリジナルの状態)

 

(本書の手法で音圧をできるだけ上げた状態)

 

 

下図は波形比較です。

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RMS値では、オリジナルの状態では最大で-7.9、音圧を上げた状態では-5.9となりました。聴感としても上がっていると思います。

もっとも、この曲の場合はあまり迫力を重視する曲調ではありませんし、みなさまも聴き比べた感想として「ま、確かにデカくなったけどちょっと音質劣化してるし、オリジナルの状態でもいいのでは?」と思われたかもしれません。(上手にやれば、同じ音圧でもあまり劣化せずに済むんでしょうけど。)

 

そもそも「音圧戦争」についてよく語られるように、音圧を過度に追求すること自体が不毛だとも最近では良く言われますよね。

ただ「音圧を上げたいならこういう手法を使えばよい」という武器を身につけておくこと自体はプラスになるはずなので、音圧が上がらなくて困っている方には有用な知識だろうと思いました。

 

以上です。それではまた!