DTMスキルアップメモ - frenchbread

見習いボカロPがそこそこのボカロPになるまで、が描かれていくはずのブログ。

ミックスにおける奥行き表現手法

こんにちはfrenchbreadです。

 

このブログでミックスについて取り扱うのは初めてです。

今まで書かなかったのは、奥深さに対して自分の理解度が到底及ばないからですが、考えてみればこれまでも、たいして聴いたことすらないEDMの作り方をまとめたりギターの打ち込みがど下手なのにアンプシミュレータの説明をしたり、と暴虐の限りを尽くしてきたので、もはや書いたところで恥さらしのタネが1個増える程度でしょう。

 

そもそも奥行きってどういうことなの

この記事のテーマは「奥行き」ですが、ミックスのトピックが扱われる際に「奥行き感、立体感を出す」といった表現はよく登場しますので、みなさまも「ああその話ね」くらいに思われたことでしょう。

なのですがちょっとばかり余計な前置きを挟むと、占いを徹底的に信じないタイプの人である僕は、DTMを始めて最初に「奥行きがどうたらこうたら」と言われたときにまず首をひねりました。

というのも、出音のポジションを語る要素として「パン(左右)」はもちろんわかるし、「周波数域(音の高低)」もわかるけど、「奥行き」なんてものは最終的にデジタル化された音声データの中には存在しない概念なんじゃないの?と思ったためです。

が、「絵」で置き換えてみると、最終的に絵は2次元に落としこまれるわけですが、3次元(奥行き)が織り込まれて描かれた絵とそうでない絵は違うので、それと同じと考えると納得できました。

・・え、だから何かって?んーまあ、そんな寂しい感性の人もDTMをやる時代になったんだな、とでも思ってください(?)

 

奥行き(距離)の違いをどう出すか

はい。そういうわけで、2次元的なステレオミックスにもう一つの軸を提供する「奥行き」の表現手法にはどういうものがあるのか、という話です。

絵における「遠近法」にもヒトの視覚の特徴を利用したトリック的な要素がありますが、ミックスにおける奥行きも、「人間がこれまで接してきた音の体験から、こういう音に接すると遠い/近いと感じる」といった、聴覚の特性を踏まえた表現技法という色合いが強いと思います。

 

となんだか高尚な雰囲気を漂わせておいてアレですが、僕の曲を聴いたことがある方ならご存じのとおり、僕はまったくミックスの中〜上級者ではありません。これまで見聞きしたり体感したノウハウをとりあえず棚卸しました、という程度です。

まあその、雑学だと思って見ていただくくらいがちょうど良いかもしれません。

 

手法1)音量は大きいほうが近く感じる・・場合もある

わかりやすい要素として最初に挙げましたが、電子系楽器、エレキギターのようにアンプを用いる楽器、マイクを通すボーカルなどでは、生演奏の場面においても機器のツマミで音量を操作できてしまうことから、実際には聴き手にとって音量の大小が純粋に距離感と結びつく比重は小さいと思います。

ピアノ・生ドラムなど、出音が機械を通さずに聴き手の耳に届く生系楽器については、音量と聴感上の距離感がある程度結びつくでしょう。

よって「場合もある」と添えておきました。

 

手法2)近い音源ほどパンの振れ幅が大きくなる

下の図で、音源Aは音源Bは聴き手から見て左右の軸では等距離に左側にありますが、音源Aは音源Bより遠くにあるため、音の聴こえてくる方向はよりセンター寄りになるはずです。

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 逆に言うと、遠い距離の音源なのにパンがLR90%以上など極端に左右に配置されている場合、「聴き手のほぼ真横に音源がある」ことになります。

ボーカルのハモりを左右に配置するケースなどはこの「包み込むような位置からの発音」の演出になるわけですね。

 

脱線っぽくなりますが、これを踏まえると注意が必要と感じるのは、単音で極端なLR配置がされている音源です。

ドラムでハイハットやシンバルが限りなくLR100%に近い設定になっているものや、鍵盤系で高音と低音でパンが左右に広く振られてしまうものですね。

おそらく、これらは単音で再生されたときの聴き映えが最もよくなるように設定されているのだと思います。ピアノなんて特に、ソロで弾く場合もあればオケに混ざるにしてもジャズからロックまで様々ですから、オケに混ぜるならユーザーがいいように調整しなさいよ、ということですね。

それをデフォルト設定のままバンド編成に放り込んでしまうと、ポジションのおかしな出音になってしまいかねないです。

(特に鍵盤。ドラムは前に出ていて自然なケースも多いですが、バラードやジャズ系などで控えめな存在感にしたい場合は少し後ろのほうが良いですよね。)

僕はこれに気づいてからは、遠いところに配置する音源に対しては、音源単体でパンが広がらないようにしたり、ステレオイメージャーで音を狭めたりするといった対策をとるようにしています。

 

なお、この手法はキックやメインボーカルなどセンター配置の音には関係ないですね。

 

手法3)低音成分が多い音は近く感じる

ここはちょっと理屈が正しいか自信がないのですが・・。

マスキング効果という用語があって、同時に2つの音が聴こえるとき、低音は高音を飲み込んでしまう性質があるそうです。ということは、人間は低音のほうが高音より前に出ている(存在感が大きい)と感じることになります。

実は音の性質としては「高い音のほうが距離が遠くなるにつれて減衰しやすい」ので、一見矛盾するように思えるのですが、音楽を聴くときの距離というのは通常それほど遠くないので、マスキング効果のほうが聴感の影響として大きいのではないか、と勝手に思っています。 

(高音の減衰を感じる遠さというのは、雲の彼方で鳴っている雷とか、離れたところから聞く花火の音とか。ごろろろ、とか、どどーん、と低音だけよく聴こえますよね。)

奥行きと存在感の話がごっちゃな感もありますが、聴感としては似たとらえかたをすると思うので、この要素も挙げておきました。

要はEQで大胆にローカットした音は薄い≒遠いと感じるよね?ということを言っているに過ぎないんですが。

 

手法4)アタック感がある音は近く感じる

もっともコントロールしやすいのはこれかもしれません。

音が近いと直線的に耳に届く→尖って(タイトに)聴こえる、遠いと反射や吸収を多く経由して耳に届く→もさっと(ファットに)聴こえる、という原理だと思います。

 

  • 手法としてメジャーなのは、近くしたい場合、コンプレッサーにおいてアタックタイムを長くしてリリースタイムを短くする(アタック音を残して持続音はタイトにする)というもの。遠くしたい場合は逆ですね。
  • アタック音が目立つと近い、という性質をふまえると、EQによって楽器ごとのアタック成分が強い周波数域(2Khz-4Khzくらいが多いでしょうか)を少し突く/引っ込めることも距離感に影響を与えると言えます。
  • ディレイやコーラスは、パラメータによっていろいろな使い方ができますが、基本的にはアタック音を薄めたりぼやかしたりするので、距離を遠くする方向に作用すると考えてよいでしょう。

 

実験してみました

ここで挙げた表現手法を使って、同じオーディオデータに対して近い・遠いを演出する実験をしました。

サンプルはピアノ・ウッドベース・ドラムの3ピースの簡単なインストで(オレンジロードというニコ動投稿曲のイントロをそのまま使いました)、ピアノのみ奥行きを変えた2バージョンを用意しました。

なお、そう言いつつも実は手法1については「音量でごまかしている」と思われると面白くないので使っていません。むしろ2つの演奏の音量が同じになるように手法3や手法4で変化した音量を調整したので、フェーダー上の音量は後半の(遠い距離の)演奏のほうを大きくしています。

 

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どうでしょうか?上手くはないでしょうが、違いは感じられるのではないかと。

エフェクタの設定の差は以下のとおりです。

前半の演奏

・ローカットはほぼなし(32Hz以下)、2Khz付近をブースト

・コンプはアタック遅め(38ms)、リリースほぼゼロ、レシオ強め(3.6:1)

・エキサイターで倍音を強化

・パンは広め

後半の演奏

・強くローカット(220Hz以下)、2Khz付近と超高音(15KHz以上)カット

・コンプはアタック最短、リリース眺め(180ms)、レシオ弱め(1.5:1)

・ディレイをかけた

・パンは狭め

 

以上です。ミックスって本当に沼が深いですね・・。